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2014年11月25日 (火)

中国の大学生向け「教科通信」への反応がすごい

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 日本の高等学校で授業をしている時に、教科通信なるプリントを頻繁に印刷配布したのであります。

 最初は、「中間考査が近いぞ、ちゃんと勉強しろ」とかいうまるで教師のような文言を印刷したのでありますが、だんだん内容がくだけて、最近読んだ書籍のPRとか映画のこととか恋愛のこととかに変わっていくのであります。しかしだんだんこれを楽しみにしてくれる生徒が現れ、授業の最初に「先生今日の教科通信のネタはなんですか? なんだ、ないんですか? じゃぁ50分寝ますんでよろしく」などと言ったものでございます。

 どういうわけか色んな相談を持ちかけてくる生徒もいたのですが、「先生、じつは毎晩、私の部屋の壁から、すごく小さな手がニューと出てくるんです、私を招くんですよ、たぶん先日堕ろした、別れた彼との子どもだと思うんですけど、やっぱ産んだ方が良かったんですかね」という、そんなこともネタにしました。もちろん、「私が北海道に来る前、兵庫県の某市で教員をしている時のことですが」と、個人が特定されないように背景の事情を演出するのであります。その時のプリントは大変な反響があり、3年生に配ったはずのプリントなのに1年生が持ってるんで、それ、どうしたんだ、と聞くと、☆☆先輩が、面白いプリントだからお前ら読め、ってくれたんですよ、などと返事が返ってきたものでございます。つらいつらい作家は辛い、というのはもちろん冗談で、こういうプリントをのべつ発行していたんじゃ管理職にバレるのも当然で、バレたその理由っちゅうのは生徒がうっかり家に置いておいたのを親が偶然読んでその内容のあまりに高校現場離れに仰天し(あたりまえだ、私の授業教室は高校現場じゃなかったんだから)校長に電話したのであります。校長は教頭を呼んで注意し、かわいそうな教頭は職員会議を開き、「生徒に配るプリントはみんな事前に教頭である私に見せて下さい」などと言ったのであります。学校という所は北海道でもご案内の通り百馬鹿の露天市なのでありますが、校長室に呼びつけてスリッパを投げ、「こんなプリントくばりやがって」とわめく兵庫県の教育者とどっちが馬鹿の程度が昂進しているか、それはそれは愉快な考察の場でもあったのでございます。

 ある中間管理職「同じ教員としてはなはだ遺憾です」

 私「大丈夫です、同じじゃありませんから」

 それはそれとして。

 「先生、この『教科通信』発行するために国語の先生になったんでしょう」とまで生徒に言われた私でございますので、中国へ渡っても発行はやめない。

 とはいえ、いくらなんでも「彼の名前を肩にタトゥーしたあなたへ」みたいなことを書くわけには行かない。「旅行と映画の好きな人に悪い人はいません。中国の人はたいへん旅行が好きですが、旅の魅力とは……」みたいなごく穏やかな内容であります。「外国語を勉強するということは、自分自身を新しい別個の人格、友人と見なし、対話ができるということです」などという「まともな」内容で攻めるのであります。

 驚きました。相手は中国人なのですけど、日本の高校のいかなる生徒からも得られなかった分厚い反応が返って参ります。内容にかかわらず、読み終わった時は拍手してくれるのですけど、それだけじゃなく、メールで、交換ノートという形で、あるいはワード文書を印刷して、もしくはペンで手書きで、感想あるいは意見を、くれるのであります。しばしば、おそろしく長文であります。

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 本日は、湖北省出身の崔さんという人が私に「感想」をくれました。過去3通の「教科通信」にまたがっての感想で、なんとA4のプリント5枚(!)でありました。自分も旅行が好きであること、日本語を勉強したことに迷いもあったが、今は自分の性格の変化に気づき、この専門で良かったと、深く納得していること……。

 4年生であります。もちろんその中でも成績優良者であります。相当に自覚的に勉強を重ねた人でないと、短期間でA4用紙5枚にまたがる日本文なんか書けない。もちろん、「先生のお話を聞いて、すっきりしました。自分を失ったじゃない、もうひとりの別な自分が生まれるわけです。」のような文法的な難もあるわけですけど、それでも大変な労作であることは変わりありません。そもそも4年生は今、卒業論文に忙殺されているはずです。

 心から、よい学生のいる大学に巡り会った、と思うのであります。

 そして、気づいたことがあります。

 異国の言語である日本語で、必死で綴ったはずなのに、彼らの意識しないまま、その文体が、私の「教科通信」に、似ているのであります。それも、書いた私の目で見て「酷似」であります。

 なんという世界に来たのだろう、と、私は思います。

 もう一度、某校の教務部長の台詞を思い出す。

 「同じ教員として、はなはだ遺憾です。」

 ご安心下さい、同じ教員じゃありません。まったく、違います。

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コメント

こんにちは。先日もコメントさせていただいたごんじゃです。
わたしは日本語教師見習いで今養成講座に通っていて、中国で日本語教師をやりたいと思っています
↑先日のコメント返しに、職業はなんでしょう?と書かれていたので、これを機にいま書きました。遅くなりました、すみません。
今日はその文章力について聞きたくてコメントさせていただきました。
毎日のようにこのブログの長文、そしてさらに教科通信も書かれているとは脱帽です。
そういったやりとりは、教師と生徒の間で必須と思いますが、
わたしにはとてもそんな毎日書く文章力はありません。
先生はどうしてそんなに書けるようになったのですか?その秘密を教えてください!

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