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2014年9月18日 (木)

森永卓郎が2013年に書いた書籍を今手にとると

 複数の人からメールをもらいます。「海南島を襲った台風のニュースを見ましたが先生の暮らしは大丈夫ですか?」というもので、心配してくれる先生や黒竜江東方学院の生徒さん達は、みんな私がすでに海南島で授業をしていると思っているわけです。書類待ち、ビザ待ちでまだ日本にいます、心配かけてごめんなさい、と毎回同じ返事を書きます。

 黒竜江東方学院とハルピンを離れたのが75日ですから、すでに2ヶ月と2週間、仕事をしていないわけです。20代で大学を卒業してから色んな職業を体験しましたが、これほど長く「仕事をしなかった」ことはもちろんありません。あらためて、「肩書きを持ち」「組織に所属し」「社会的つながりを持っている」ということが私に約束した精神の安定について、考えます。もちろん、仕事をしている間はそんなこと考えません。これが当たり前だと思っています。

 私にとって自信、こころの安定というのはいかにもろいものだったか、なんとそれについて無自覚であったことか、と思います。そういう思いに至ったのは何度も書きますが初めてであります。じぶん1人で、自分自身で、安定なんかできない人間だということです。3人の子どもの中には、「63歳だもん、もういいでしょう、仕事なんかしないで休んでいいでしょう」という声もあります。

 でも。

 それに耳を貸し、その通りにするには大変な努力と、しっかりした心の支えが必要です。

 

 さて。

 勤労者の月給が、毎年最低でも1万円ずつ上がった時代は、もう決して戻ってこない、日本のどこかには数千万の年収を得てかつての日本人にも考えられなかった豪華な暮らしをする人もいる、そういう「層」はあるでしょうが、全体として浜田の言う「経済のパイ」が世代・階層横断的に「行き渡る」ことはあり得ない、それはしっかりと「過去のある時代」の記憶(つまり、もう戻ってくることはない)と自覚しないといけない、と、何度も何度も書いてきました。

 森永卓郎の「年収300万円時代を生き抜く経済学」はもう10年以上前の本ですけど、森永は本当に2003年には「年収300万円のサラリーマンが『下層の平均』になる」と思っていたのか、と疑ってしまいます。今、生活保護に満たない年収で一生懸命仕事をしている人は本当に多いし、もしかして「年収300万です」というと、「うらやましい」と言われてしまう局面だってあるのかもしれない。書籍の中で森永は、リッチな暮らしも素敵だが、1000円の焼き肉食べ放題も、一皿100円の回転寿司もおいしいじゃないか、自信を持て、と書いています。しかし、恋人と食べる定額の焼き肉や(ビールはしっかり別料金だよ)週末に家族を連れて食べる廻る寿司は今は立派に「贅沢」の範疇に入っています。2003年に「下層の民の喜び」だったそれが今は「普通の贅沢」になったとするなら、今から10年後はどうなるのか。

 とはいえ森永の書いたこの本は、節約と身近な人的ネットワークの価値と堅実な仕事・資産活用を大切にするまともな文脈に満ちています。悪口を言ってはいけない。それでもなお、私は、300万円が底ではないし更に経済は悪化するにちがいなくそれでも暴動や大規模デモが起こらないのは親の世代に資産があるせいだがそれすらも消費され枯渇したら、それに対応するパラダイムを私たちは持てるのかどうなのか、と疑います。アベノミクス(もちろん私にはこの言葉の意味がわからない)にあえかな期待を寄せ「本当に景気が(私はこの『景気』という言葉の、納得のいく定義にも触れたことがない)良くなったらいいねぇ」としか言えないうちは、無理だし将来は危険なままだろう。

 少なくとも私が我が子に呼びかけていることは、本を読んで脳に言葉を蓄え映画でも絵画でも綺麗な風景でも見る努力をして感性を磨き個人として充実できる趣味や仕事を展望する想像力を模索しよう、ということです。とりあえずはテレビを消し携帯電話のディスプレイを見つめ続ける自分と近親者に危機感を抱き(そうすると私だってこうやってブログを更新している場合じゃないのだが)小さな日々の成功体験を……料理がうまくできた、ということなどをはじめとして……積み重ねていこう、心に刻もう、ということです。

 高校生と会話していて、「え?」と思うことが良くありました。

 「将来の希望? 楽しく暮らすことです。」

 それは、永遠に無理です。

 楽しい暮らしというものは、ありません。それは具体的な何かです。たくさんの給料、美味しい食事、優しい恋人、いい映画、感動するに足る書籍、心を豊かにしてくれる近親者、少数の、しかし自分にとっては貴重な人からの、信頼。

 「楽しい暮らし」を実現させるためにはそれら11つから自分が何をチョイスするか、どれとどれなら入手可能なのか、考える努力が必要です。もちろん考えるための素材は「言葉」であり、いまやそれは意識して家庭に、自分個人に負荷をかけないと手に入らない。

 今こそ読書しないでどうする、と私は思います。

 世界史に残る空前の繁栄を遂げた国の、その「繁栄」を消費した者の責任が、私たちには、あります。その責任を、「おせっかいです」と言われないで果たすための方策……実は難しいのかも知れない。

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コメント

森永卓郎という男が厄介なのは、無責任な言いっぱなしが目に余ることだ。
かつて声高に小泉政権を罵倒し、自称「経済アナリスト」の立場として「対ドル円相場が50円台」「株価が5000円台」となる不況の到来を唱えたが、かすりもしなかった。
しかもそれに何の反省もせずに、未だに大嘘を垂れ流している。

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