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2014年9月13日 (土)

私の「1万円選書」

Fullnudecomputer


 町を歩くと、知り合いが、「えっ、まだ日本にいるんですか?」と聞きます。いちいち説明するのは面倒だし意味もないので、「ビザ待ちです」とだけ、答えています。

 国によっては、ビザを発行するのに今までの「無犯罪証明書」を要求するそうです。もし中国がそれを要求するとしたら、私なら日本の警察に行って犯罪を犯したことのない証明書を書いてもらうことになります。そういう書類は私自身見たことない。私がそれを発行してもらえる人間かどうか、さらに自信がない。

 まぁ中国はそういう書類を寄越せとは(今のところは)言わない。

 とにかく早く海口市に行きたい。いま、「いきたい」と入力して変換ボタンを押したら、「逝きたい」と出た。無礼なパソコンだ。あ、自分でマザーボード買ってきて組んだんだった。(超自慢のフルヌードパソコンね)

 

 ところで、最近読んでいる書籍はみんな、砂川市内の書店の社長さんが、私のために選んでくださったものです。私がこの社長さんに「1万円分で私のために選書をお願いします」とメールすると、何通かのやりとりがあったのち、「こういうラインナップでどうでしょう」と提案があります。私の場合、この社長さんの考えられることですからまったく差し替えのお願いをすることなく(追加をお願いすることは、ある)取り寄せてもらいます。

 この企画は、8月末のあるテレビ番組で紹介されてから、多くの人に知られることになり現在数百件の依頼ストックを抱えているらしい。選書の選定はすべて社長が自分でするから(当たり前だ、社長以外だれにもできない)、ストックは増えることはあっても減ることがないのではないか、と心配になるのであります。

 私も、こういう企画がなければ、不覚にも平川克美さんという論客を知ることがなかった。この人の書籍を読んで、我が子が生きていくこれからの日本の将来は決して暗澹たるものではない、と思えたのであります。日本人として大事な、自信を取り戻すことになった名著「逝きし世の面影」も、この社長さんから教えられなかったら、読まないまま死ぬところだった。

 当然、反対意見もあるだろう。「書店の社長さんに1万円を渡して『俺のために本を選んでくれ』って、そんな主体性のない読書態度があるか」というディレッタントもいるに違いない。いていいと思う。私はそういう人のことだって深く尊敬するし、その人のような該博な知識と読書に寄せる知見、なにより情報があればいいなぁと、素直に思う。(ホントです)

 でも、見知らぬ著者、見知らぬ書籍との出会いは、本当に貴重です。人は、探して何かを「見つける」ことより、ばったり「出会う」ことのほうに、より大きく深く人生上の転換機会を見いだすものだろうと、思っている。

 錦織選手は、「自分にはどういうスポーツが向くかな」と考えて、探して、見つけたわけではない。

 イチロー選手も、松坂大輔選手も、当然そうだ。気づいたらそこにラケットが、グラブが、あった。

 スポーツと書籍は違う、という人もいるかもしれない。そもそも議論にならない。ただ私の場合は書籍との出会いという点において大いに幸福だった、「自分にどの本が向くかな」と必死で考えたって自分の人生の幅は広がらなかった(たいして)に違いない、そう思っているというだけだ。

 それと。

 読書傾向というのは否応なくその人、自身である。その人がどういう人であるか、それは何を読んでいるか、という問いと全くイコールである。だから私は、自分の読書傾向を批判する人には決して耳を貸さないしこころうち深く軽蔑してもいる。また、他人の読書傾向を批判したこともない(……実は、それは「希望」である。人生はうまくいかない)。

 「だからこそ書籍は自分で時間と手間をかけて選ばないといけないじゃないか」という人が、いるかもしれない。

 まっとうな批判に聞こえるかも知れないが、逆だ。

 「えっ、こんな著者がみぢかにいたのか、知らなかった」という驚きの体験だけが、新しい想像と創造の地平に、私の人生を導く。自分で書籍を探す行為の重要性を、とうぜん、否定しない。でもその「選別」は結局現在の自分の知識とセンスに(私の場合は、言いようもないほど悲しい量の情報に)依っている。つまり、絶望的に貧弱なままで、ということだ。

 もちろん。

 岩田社長から紹介された1万円選書を読んだ後でも、私の脳は貧弱なままだ。そんなこと知っている。

 1つの貧弱と別な1つの貧弱の狭隘を歩く、それが人生にほかならない。

 それを教えたのも、書籍だった。岩田社長だった。

 

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