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2014年6月28日 (土)

思い出に「怯える」か、思い出を「つくる」か……6月28日のこと

 628日であります。

 この日は、必ず1年に1回、廻って参ります。私にとっては、ごくごく特別な日であります。この日は、1年に存在しないわけにはいきません。627日の次の日は必ず628日であり、とばして29日にすることはできません。とめどもなく憂鬱なこの日は、どんなことがあっても1年に1回、律儀に廻って参ります。

 私のバイクは2台のバイクが合計3回、盗まれていますが、なんとそのうちの2回が同じ日、628日なのであります。それから私にとって終生忘れ得ない1997年春の神戸の事件、その犯人が逮捕され、正体が判明し、日本中の子どもを育てる親が驚愕恐怖したのが、628日だ。

 私には、この人の命が失われるのなら自分の命が無くなったほうが千倍よろしいという、そのくらい愛してやまない人が数名いますが、そのうちの1人の大怪我の日が、628日なのだ。この日ほど、日頃信じない神を思ったことはない。私は手術室のドアを凝視し、かれ蘇るなら我は死ぬも可である、と何千回その神に懇願したかしれない。そのような日であります。

 告白すると、してはいけない親不孝をした私も悪い。すでに危篤状態になっている父の病室付き添いを姉と母に任せ、どうしても行きたいからと、大阪・厚生年金ホールの「ウエザーリポートコンサート」に参上したのが、628日。父はそのまま昏睡を続け、73日に亡くなりました。ちなみにチケット代金は6800円という妙な数字でありました。S席なのにちっとも見えなかった。ウェイン・ショーターが、とんでもないところでアルトサックスを「ぼっ」とミスした。ピーターアースキンは神のようなドラムソロを叩いたが。

 とにかくこの日が来ると、私は不吉な予感におののくマクベスのように、両手を握りしめ、怯えるのであります。心の中にさそりを入れてしまったおのが非と運命とをともども見つめないわけに行かないのであります。

 

 75日には日本へ帰る私は、荷物発想の日を628日と設定しました。この日以外にはないのであります。ちなみに中国の郵便局は土曜日でも午後4時半まで業務している。

 1年生の2人、姜さん常くんに、運搬と郵便局での交渉通訳を頼みました。

 いつものように、すばらしい活躍でありました。期待以上の仕事。スーツケースのまま船便で送れると思ったら段ボール箱を出されこれと入れ替えろと言われましたが、人と荷物でごった返す局内で、その作業を黙々とやってくれました。あげくの果て、郵便局の職員が、「外国向け送り状がなくなった。君、隣町の郵便局まで行って送り状をもらって来てくれ」と言われ、常くんが全速力で走るという一幕もあった。それもしてくれた。20歳の若者が、外国人のためにここまで誠実献身を見せてくれるのかと思う、そんな日であった。

 

 私の628日の運命は、どこかで変わったのかも知れない、と思いました。

 姜さん常くんに、「せめてご飯をご馳走したい。東方餃子へ行こう」と言いました。2人は、かたく辞退。姜さんは「ダイエット中です。お昼ご飯は食べないんです」常くんは「友達と約束があります」

 ダイエットなんかしていないし、友達との約束なんかないのであります。

 深く、言葉のみで感謝して、別れました。メールを送りました。「知道怎么说谢谢。」

 来年も、628日は廻って参ります。

 2015628日には、バイク盗難のことなんか、もう思い出さない。

 汗を拭きながら「先生気を遣わないで。当然のことですから。学校へ帰りましょう」と笑った姜さん常くんの顔を、思い出すでありましょう。

 彼等のしたことは、ただの荷物発送では、なかったのであります。

 

 

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