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2014年5月 7日 (水)

中国で漢詩の授業をするという転倒

 1年生の教室で、唐代の漢詩を日本語で読み下し、それを中国人生徒に読ませる、という授業を試みました。

 ひとつの「転倒」だということはわかっております。しかし私はいつかどこかで、「日本の高校ではこんな風に中国の詩を味わうのだ」ということを披露したかったのです。

 私は日本でも中国でも一匹のボウフラでありますから批判をする人なんておりませんが、もう少し実力のある人間だったら批判を受けていたことでしょう。

 読み下し自体、あるグループの日本の国語教師は絶対にやらないことです。

 私は、「漢詩を日本語のルールで読み下すことは絶対にしてはいけない」という主張を持つ高校の国語教師グループを、知っております。彼らは(彼女らは)語順を入れかえながら漢詩を読むことに断固反対します。当然、教科書準拠の指導法なんか無視します。李白の有名な詩の一節を、普通の教師はたとえば、「床前月光を明らかにす」とやるわけですが、そんな風には読まず、あくまで「チュワンチイェンミンユェグヮーン」と読むのであります。そして読み終わり「こう読まないと押韻が分かんねぇだろ」と胸を張るわけです。

 一つの考え方ではあります。しかし私はそういう離れ業も使えませんでしたので、おとなしく書き下し文をもって解釈していたのであります。

 漢詩は、4つを選びました。「黃鶴楼にて孟浩然の広陵に之くを送る」「春望」「登高」さいごに「静夜思」であります。

 生徒には、漢詩のオリジナルの読みと日本語の読み下しと並行してやるよう指示するわけですが、よく知っているだけに(当然暗唱……中国語で背誦……できる)朗読はものすごく上手です。「登高」は全対のすばらしい構成の七言律詩ですが、哀・廻・来・台・杯、という押韻の美しさもよくよくわかります。そして、「日本の高校生はこうやって漢詩を読む」というその「読み下し」ですけど、すぐに覚えてしまいます。

 「来週の水曜日には、これを覚えて来て貰います。暗誦して貰います」と言います。すると、最前列に座っていた男子が、「来週? 今でも出来ますけど。」

 暗誦は、得意なのであります。

 

 ついでに。

 李白の「静夜思」は、日本の高校の教科書と中国のオリジナルとで違っています。

 床前明月光  疑是地上霜  挙頭望明月  低頭思故郷

 これが中国のオリジナルです。

 床前看月光  疑是地上霜  挙頭望山月  低頭思故郷

 これが日本の教科書です。日本と中国で違う、ということを中国の大学生はもちろん知っていて、「遣唐使が間違って伝えたのでしょう」という見解であります。

 私には理由はよくわかりません。遣唐使は正しく伝えたのかもしれません。伝録する担当者が、「1つの漢詩に同じ字はなるべく使わない方が良い」という信念のもと、一部を書き換えた、という可能性は大いにあります。源氏物語も古今和歌集もそのような書き換えを受けております。

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