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2014年4月24日 (木)

自分の希望がわからないとニュースを見てもわからない

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20128月下旬の着任以来、ハルピンの人は親切である、日本人と打ち明けたあとも態度を変えることがない、とずっと言ってきました、書いてきました。

 しかし私は、誰一人として、1930年代並びに40年代前半の、旧日本軍による蛮行を、忘れたわけではない、ということも、ちゃんと承知しております。「なに国人?」「日本人だよ」「へえぇ」そういうやりとりのあと商品の受け渡しが行われ一切は友好的なのでありますが、実は単に「70年前に国家が、軍隊が、与えた損害と目の前の日本人は別」と考えているだけに過ぎない、ということも知っています。だから、私はできるだけ「調子に乗らないように、控えめに」と気をつけて参りました。バスの中ではなるべく同行の生徒と会話しない、ということがその一つです。商店で国籍を聞かれた時に正直に言うのは、嘘をつくのが嫌だからで、自分から「日本から来たんだけどね」といったことは決してありません。一人で行動する時に気をつけるのは言うまでもありません。

 残念ながら、中国在留の日本人教師の中には、要請すれば必ず応じてくれる生徒ばかりなのを良いことに、荷物持ちと称して時には複数の男子生徒を買い物の際に同行させる、という人物もいるそうです。(ハルピンにはいないが)本当に残念です。

 一人の日本人として謙虚でありたい、731部隊の罪証記念館はちゃんと複数回訪問して思いを新たにしたい、という風に、本気で思っております。父ははっきりと中国大陸で、天皇の軍隊の一兵卒として、武器をもって戦闘行為に参加いたしました。戦後すぐに復員、すぐに結婚、1951年に私が生まれましたが、死ぬまで、自分が具体的に何をしたか、語りませんでした。左の肘の所にできた盲貫銃創の原因をどんなに聞いても語りませんでした。自分が中国で3年間を暮らすことになると知っていたらどんなに父が拒んでも実は何が彼の身の上にあったのか、聞き出すところでありましたが、誠に誠に残念なことながら、ついに彼の具体的な兵士としての行動を知らないのであります。母は少しは聞いたようでありますが、彼女もまた内容を語りませんでした。私に「少しは聞いたよ」と、語ったのみであります。

 中国大陸を進軍する天皇の兵士達を撮影した記録画像を見るたび、動画でも写真でもそこに父がいないか、必死で見入る私がおります。しかし、実のところ。

 仮に、ただ、食料を運搬するだけの兵士であったとしても、歩兵銃を百発千発撃つ兵士であったとしても、同じであります。尊敬する父がしたのは加害の行為だ。センチメンタルなことを言うな、当時は戦争をしていたのだろう、という声が私の中のどこかでする。それもまた本当だと思う。一瞬、私の思考は停止する。

 「しかも70年以上前だろう」それもまた本当だと思う。

 「だからこそ国交回復の1972年以降、総額で63千億円もの経済援助をしてきたのだろう」それもまた本当だと思う。空港を造り橋をかけた。

 「お前には3人の子どもがいるだろう、その子ども達にも加害者としての負い目を引きずらせるつもりか? お前は良い、実の父が兵士だったのだから、しかしお前の子ども達は祖父の顔すら知らないだろう?」という声もする。それもまたまっとうな問いかけだと思う。

 62才の私は、そこでだんだんわからなくなる。思考が停止したまま機能を開始しないのは。

 わからないのは、自分が実際の所何を望んでいるのかわからないからだ。

 南の島に灯台を造り船だまりを造り日本人が常駐しガスと石油を掘り抗議に来た海警を日本の自衛隊が蹴散らすことか?

 それとも、日本政府が、南の島を粛々と差し出して、「63千億の次はこれで何とか」と、弱く下手に出てなだめることか?

 減速したとは言え経済成長率が7.5%というのは大変な数字だ、それがあと10年続くということは内需主導の健全な経済成長が軌道に乗ったということで辺縁部と内陸部の経済格差がうんと縮小したということだ、いっそのこと30年前に誰かが予言したように日本が中国の省の一つとして101日には各家々に赤い国旗を掲揚するようになることか?

 ……自分が何を望んでいるのかわからないと、あらゆることがわからない。わからないまま、私は20157月まで中国で暮らし、そのあと日本に帰り、わからないまま死ぬ。いや、それはもっとも受け入れ難い。それじゃ今悩んでいる意味がない。

 目の前に、困難な日本語学習に取り組む85人の中国人がいる。今日は、「どうせ」という日本語の解釈を勉強した。これを中国語に直すとして、「一定」なのか「应该」なのかと話し合い、最終的に「反正」だろうと、おちついた。彼ら彼女らは自分の意見を言うとき、立ち上がり、その意見を効果的にしようとする。この人達と週に144時間を一緒にすごす時、「わからない」はないだろう。

 彼らはとてもけなげで立派だ。

 少なくとも、私の希望の主要な一つは「和解」であるだろう。敵対が続けば良いとは絶対に思わない。目の前の85人が大切にしている祖国の大切さは私が来年の夏に帰る「祖国」の大切さと同じだ。敵対でよいわけがない。実利的に考えても、これからの経済動向を思う時、敵対して良いことなど何もないことが分かる。「不買」という敵対が不毛であり虚妄でもあることを、パソコンや携帯電話の中を少し覗いただけで理解することができる。いわば日本と中国は敵対しながら分業しているわけで、それがねじれであり矛盾であると、私は思っている。日中の敵対が続くことで得をするのが誰かははっきりしている。その「もの」はメディアを使い、敵対が一人一人の国民レベルに定着するべく、働きかけ、ある程度成功した。しかしそれは出口のない混乱の継続でしかない。敵対から40億円を産み出し弁護士としての「名声」も獲得した人物がいて困ったことだと思うが、このたびの三井商船のとった措置がなんでも金で解決してきた今までの流れにのっとったものなのか私は知らない。しかしとりあえず、私の希望とは違う、ということが、わかる。自分が望むのが「和解」だと仮定すると(だんだん仮定でなくなる)、ようやく、わかる。

 中国に対しても、がまんのできないことは、ある(ブログには書けない)。しかし、私は一衣帯水という言葉通り、この国と、この国の人達と、和解に向かう日本という祖国を、見たいのだと思う。

 明日も元気に授業します。

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コメント

来年もハルピンで教鞭をとることにしたんですね。羨ましいです。私は、家庭の事情で、1年半しか出来なかったので、なおさらそう思います。お互いの言語を学び合うことは、日中友好(和解)の架け橋になると思います。私も、日中関係に関心を持ち続けています。今日のブログの内容は、簡単にコメントできない内容ですね。また、あとで。毎日とはいきませんが、度々読ませてもらっています。

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