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2013年11月19日 (火)

「大好き」と「大嫌い」の間

 私は現在は中国国内の学校で日本語を教えていますが、数えるのがじゃまくさくなるほど、いくつもの学校を渡り歩いておりました。その、いくつめかの高校で。

 ある商業科の若い女の先生が、「生徒がこんなの書いてきました」といって着任早々最初の授業でのアンケートを見せてくれました。

 もちろん、どのような授業を望むか、何を身につけたいか、資格は何を取ろうと思っているか、そのような建設的なことを生徒達に聞こうと思ったのでしょう。

 彼女が青い顔をして私に見せてくれた紙には、最後の「その他」の欄にくっきりとした太いボールペンで、「あなた、嫌いです」と書いてありました。

 20台の女の先生が悩むのは無理ありません。

 私は、「それ、大好きってことですよ」と申し上げました。

 「まさか」と、彼女。私は、説明しても無理だと思ったので、「まぁ3ヶ月たったらわかります、彼女がいちばん、先生のことを好きになるはずです」と申し上げて会話を終えました。

 あとで、彼女は「衝撃的なほど先生の言ったことはそのとおりでした」と教えてくれました。「衝撃」という言葉がとても印象に残りました。

 そんなものだと思います。「嫌い」というのは「好きだ」ということです。ですから私はある生徒がレポート用紙にびっしりと書いた「中死ね中死ね中死ね中死ね……」を見たとき、おぉ、これは熱烈なラブレターだ、と思いました。もちろん、その通りでした。残念ながらタバコや酒、公共施設での器物損壊、乱脈な交友関係が災いして高校生活を全うすることはできませんでしたが、彼女とはお互いに通い合うものがあったと思っております。「実はそんなに俺のことが嫌いじゃないだろう」というと、ノータイムで彼女は「はい」と返事しました。

 「あんたなんか、大嫌いだよっ!」という生徒とは、実はそれほどの問題、起きません。困るのは、「先生のことが大好きです」と態度で示し、時にそういう言動をも、取る生徒です。それはつまり、「大嫌いです」ということだからです。

 先生が好きです、信頼しています、何でも話せます、父(祖父)のようです、……実は大変に危険です。その生徒が、何かのきっかけで自分の中の「嫌い」に気づくとき、噴出するその嫌悪は時に物理的な暴力になって教師との人間関係を、もっと不幸なことに自分自身の人生を、損壊します。

 そういう生徒に出会うとき、私は「実はあなたは私が嫌いなんだ」などと言わず、「あなたの気持ちはありがたいがそういう人に限ってふとしたきっかけで『大嫌い』になるものだ、そういう不幸を避けるために普通に話してくれるのが一番いい」と、丁寧に言っておりました。(もちろんそれでも失敗はありました)

 突然話は変わって、アメリカについて。

 私のような世代の人間は特にそうだと思うのですが、アメリカは一時期本当に憧れでした。テレビをつければ番組の3分の1は西部劇か「サーフサイド6」みたいなドラマでした。でなければ「ルーシーショー」みたいなバラエティ。冷蔵庫にはいつも冷たいジュースが入っていて着ている服はいつもしゃれていて恋愛はクールでかっこよくクリントイーストウッドの身のこなしは「かっこいい」がそのまま形になっているようだった。

 それは、本当に「大好き」だったのか?

 密かに増殖し続ける「大嫌い」に、私たちは気づかなかっただけなのではないか?

 マリリン・モンローは死にジャニスジョップリンも死んだ。あの1975年のベトナム敗戦を期に「強いアメリカ」には疑問符が付くようになって久しい。イラクをはじめとする中東で振りまいたアメリカの嘘は歴然としていて財政の崖も先日のキャビネットの呆れるばかりの「休暇」もみんなかつての巨国が凋落の時を迎えていることを物語っている。アメリカでもやっかい者になっている海兵隊は沖縄から出ても行くところがない。あいかわらず諜報と謀略の術には長けているがそれがパワーというより「最後のあがき」だと、世界が知ってしまった。

 「先生のことが好きです」と潤んだ瞳で語った女子生徒が「てめぇなんかもともと嫌いだったんだよっ!」と叫ぶには3年かからないが、日本人はもう少し時間はかかったにせよ、これから世にも恐ろしい「反米へのスィング」始まろうとしている、つまりはそういうことだったのではないか?

 ……で、もし本当にそうだとするなら。

 日本と、中国との関係というのは、これから、どこへ?

 どんなふうに?

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