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2013年11月 5日 (火)

沈む船から飛び降りる時

 これをお読みくださる知人・親戚・家族の方はご記憶かどうかわかりませんが、松本智津夫という死刑囚がいる。1995320日、東京の地下鉄車内で猛毒ガスを撒いた事件の立案・首謀者だった。

 彼の死刑を回避しようという勢力(?)は国内外にあり、かつて彼の『教え』を受けた人間で指名手配されている逃亡中・潜伏中の人間を数年おきに小刻みに警察に『出頭』させ、弁護団に審理のやり直しを主張させている。すべてが最初から仕組まれていたことだと思うが法に照らして違法なのか正当なのか私にはわからない。村上春樹の名著『アンダーグラウンド』を泣きながら読んだ私は、恐ろしいことに時に「松本智津夫なんて早く死刑でいいのに」と、思ってしまう。村上はそんな読者の誕生を意図していないのに。なんて弱い人間なんだろうと、私は自分のことを思う。

 それはそれとして。

 その松本にはもうひとつ、ここに書きたくない名前があるが、その名前で書いた著作『世紀末日本の哀しみ』が、北海道の私の実家にある。これを取り寄せてくれた書店さんは、この書籍を発注したばかりに刑事の来訪を受けたそうだ。「どんな人の注文か」「そいつはどの程度アブナイのか」というようなことを聞かれたらしい。店主さんがどう返答したのか、ものすごく興味がある。でも本題じゃない。

 『世紀末~』の中に、「日本が戦争をするとしたらそれはアメリカしかない」というひどく興味深いくだりがある。

 19458月の敗戦、9月のアメリカ軍駐留からずっと、ずっと、日本がたどってきた道は『無反省で無原則な依存』だった。開高健の『流亡の書』はこれをカリカチュアライズしたものである。日本は、「肥えた従順な娼婦」のように(作中の言葉)あらゆる要求に誠実に懸命に応えた。70年近く、死ぬほど(文字通り)一生懸命働いた日本人は(祖父母と両親の世代だ)1300兆円という立派な数値的達成を示したが、その金のうちかなりの部分は日本にはない。アメリカにある。アメリカの国債を買い支えたわけだが、これが戻ってくることはありえない。死刑囚は、「これを『返せ戻せ』という日をアメリカは待っている。それが開戦のきっかけとなり日本はふたたび焼け野原になる」と、とても立派な『予言』を行った。

 なんでこんな荒唐無稽なことを言う人間に大勢の人間がつき従い、殺人ガスを撒くに至ったのだ、と私は驚愕したが、待てよ、『世紀末~』の中には、どこか本当(かもしれない)のこともあったりするのではないか?

 アメリカは、もしかして日本が『貸した』……兆円をどうするか、実はひどく興味を持っているのではないか? いずれアメリカ国債は紙くずになる(あるいはもう、なっている)ごく好意的に言うならそれだけぶんのアメリカ債が日本の銀行にある。一番たくさん保有している(保有させられている)のはUFJだという噂もある。すでに死んでいるアメリカがいよいよ腐って骨になりどう控えめに見ても回復不可能に「ちゃんと」見える日、噂どおりならUFJはどうなるのか?

 いくつもの中近東がらみの事件が物語るようにもうアメリカが軍事的経済的に世界を管理支配することはない。財政の崖は消滅したのではなく単に目をそらすよう強制されただけだと、みんな知っている。政府の停止は何を物語る。中近東の問題をロシアに仲裁してもらわないといけないような事態を、アメリカ人が、世界の人が、果たして想像したか。

 泥の船がいよいよ溶け出したと、私は思っている。10年以内、というと私は生きているかどうか危ういが、予想を超えて長生きをしたとして私はアメリカによる救済とそのアメリカの崩壊と、両方を目撃する世にも珍しい世代となる。

 ここにきて、大きな疑問がわく。当たり前のことだ。

 安倍は、なんで沈む船にしがみつく?

 霞ヶ関はなんで沈み始めた船をもういちど海面に引き上げようとする?

 そしてこの『疑問』をなんでメディアは顕在化しない?

 アメリカが犯した大きな罪がある。私はアメリカから食糧支援を受けて実施された給食を食べた世代だが、それでも疑問は疑問だ。

 アメリカが犯した罪は、世界を1つの価値観でくくろうとしたことだ。経済が倍倍ゲームで膨らみ続けるとき、幸福も膨らみ続けそこには天井というものがないという、無理な考えである。どんな経済もどんな生産活動もいつかは終焉する。そのとき私たちは別な価値観を発見しないといけない。その『転換』というか発想の『点検』を、するな、させるな、とアメリカは世界に向けてたしかに言った。

 目をつむって確信犯的にリンカーン(だっけ?)のグリーンスタンプを印刷し続けた末に何が訪れるか小学生でもわかる。言うまでもなく壮大なインフレだがことはそんなに小さくはない。

 若者から『希望=人生の展望の健全な構築』を奪ったということだ。

 「幸福になりたいんです。」

 「そう? じゃぁ、君に、お札を印刷する機械を貸してあげよう。」

 ……68年も「なんかおかしいぞ」と思い続けたら、誰だって考えようとするだろう。

でも、それを考えているのは……。

 なんで経済人でも政治家でもなく小説家なんだ?

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