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2013年10月25日 (金)

なぜか中国で日本映画『白夜行』を観る

 中国で、日本の映画『白夜行』を見る、というのも考えてみれば変であります。中国にいるのだから中国の映画を見ればよい。実は、何本かは見たのであります。中国の若者が3人でアメリカに渡り、帰国して英語学校を開くが使用しようとした教科書に著作権問題が発生し、解決のために大変な苦労を味わう、3人の友情もズタズタに……? という、結構マジメな映画。

 あの超名作『山の郵便配達』と同じ監督が撮った、『Postman in paradise』。前半は、上下水道はおろか電気もテレビもないという、娯楽らしいものの全くない雲南省の山間の村に定期的にやってくる人気者の郵便配達夫と、人々との交流が主です。子ども達と繰り広げる愉快なドタバタが展開され、コミカルな映画なのかな? と思うと、後半はものすごくシリアスな話になり最後は大きな悲しみが鑑賞者を包む……。

 中国映画は基本的に綺麗でゆったりとしてとてもいいのだけど、いかんせん、日本未公開の作品が多く、字幕がないのでストーリーがほとんどわからない。たとえば、上の『Postman……』でも、大変な苦労の末主人公が1通の封書を山の娘に届けるのだけど、娘はお化粧して着飾って今にも結婚式に花嫁として出ようというところだった、でも封書を受け取ったことで結婚式は中止となり、花婿(10代の少年)は悲嘆に暮れる、花嫁は郵便夫と一緒に山を下る……というシーンがあるのだけど、字幕の意味がわからないからなんで1通の封書で結婚式が取りやめになるのかわからない。

 で、『白夜行』を見るのであります。字幕は中国語、でももちろん音声は日本語のままなので、何の問題もなく鑑賞できます。日本語と中国語と2つの字幕がでるのが少し邪魔ですけど。しかも日本語の字幕が時々間違っている。

 高良健吾の熱演がすばらしい、老刑事役の船越英一郎も時効の過ぎた事件へのこだわりを捨てられない、いわばなにかを「背負ってしまった」人間のもがきをよく表現していた、たった33歳の監督があれだけクセのある演技者をよく統率したなぁと、中国で感動したのでありました。(おかしいな、日本でも見たのにな)

 日本の映画雑誌ではけっこう辛口評価されていますけど、私はそもそも映画をけなす人が大嫌いです。どんな芸術作品でもそうですけど、特に映画は、誉めるよりけなす方が簡単です。そして、けなしていると、バカでも賢そうに見えちゃうものです。非常に危険です。だいたい、映画評論家なんて、この世にいてはいけないのではないかとさえ、思います。基本的に私は映画を見ようというとき、『評論家』が何を言っていようが気にしません。毎日新聞の購読をやめたのも映画批評が基本的にけなす論調だったからでした。プロが楽をしちゃいけねーな。そもそも、邦画を作製する人間を基本的に励まさないといけないだろ。評論家が(ネット上のアマチュア評論家も含めて)けなしているから見るのをやめようという人間は、一生1本の映画も見るなといいたい。評論家とお前と、同じ感性を持っているわけがネェだろ。

 『白夜行』はおっそろしく分厚い書籍ですけど、もちろんあんなボリュームが2時間の映画に収まるわけがない。脚本家は非常にたくみに、複数の人間を1人にまとめたり、原作でいたはずの人物やエピソードを省略したりして、1本の映画に仕立てています。それでいて性急な感じはしないし、私がよく知っている1980年当時の大阪の下町の情景がものすごくリアルに再現されているし、見事だと思います。注意深く見れば、当時の大阪のゴミゴミ感を再現するのにスタッフがどれほど細部に苦労しているかわかりそうなものだ。

 原作を再現することはそもそも無理です。別の物語だと思った方が良い。私は両方を鑑賞し、両方に感心しました。そして、映画を見終わって、ありうる話だし、高良健吾さんと堀北真希さんと、両方の悲しみに寄り添うことができる、と思いました。あの分厚い悲しみと絶望と凶暴性を秘めた重い重い人生を持つ高良健吾が最後の最後で見せた、あの飛び切りクリーンな笑顔、それ故の悲しみ。小説を読んだ人間は、あの笑顔のままで高良が死んでしまうことを知っている。

 でも、全体にとてつもなくダークなあの映画の中で、最後の高良さんの微笑みは、ひとつの赤い高まりとして光り輝くのであります。ううむ高良健吾さんすごい。監督もすごい。

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