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2013年6月27日 (木)

ラブレターの添削を頼まれること

 中国人学生の表現能力が高いというべきなのか、いやそういう問題じゃないな、誰かにあてて文章を書く時の、その相手とのスタンスの問題というべきなのか……いやぁもう何がなんだかわかんねぇや。

 年度末ですから、何人かの先生は他の大学へ移ります。少数ながら帰国する先生というのもいらっしゃいます。私は、「言っておくけど来年度お前なんかいらねぇよ」と言われる前に、「8月からもこの大学で仕事しますからねぇ。ゴロゴロにゃーん」とこっちからやかましく言いました。先日、めでたく契約書の交換を行いました。

 さて。

 「いなくなる先生にあてて、こんな手紙を書きました。どこか間違ったところはないでしょうか」と、もうあと少しで卒業する某女子学生さんが私のところにやってきました。正直、そういう文章はできるだけ見たくないのだけど、「文章にマチガイはないか」と言われると、日本人教師として「見ません」とは言いにくい。まぁ、パーソナルな行為なんだから他人(つまり私)に見せる、ということからして、ちょっと感性違うよなぁ、と思ってしまうのですけど。

 びっくりしました。

 驚いたことのその1。詩的であります、韻を踏み、リズムを重視し、重ねて訴え、情感に訴え、悲痛哀惜の思いがもうこれでもかというほど土砂降り状態なのであります。たとえば、(たとえばですよ)こういう案配であります。

 ……着任されたばかりの時からずっと、先生のことが気になっていました。いつも、お困りのことがないか、何か私に出来ることがないか、懸命に考えていました、でも、あなたは、時々、そんな私の思いとは関わりなく、わがまま勝手に行動なさいました。私はあなたを怒らせたのかと不安になりました。私とあなたの距離は開いたり縮まったり、ずっと向こうにいらっしゃったかと思うと突然近くにあなたはいたり……。

 (ここから私の文)

 驚いたことのその2。私が椅子から転がり落ちそうになったことというのは、それが紛れもなく『ラブレター』であったからであります。通常の日本人の感覚でそれを読むなら、恋文以外の何ものでもない。文章はえんえん続き、遠くへ去る先生の安全を願い病気を気遣い(この先生にはいかなる持病もないのに)再会を切実に切実に願い心は1つだとかき口説き、この数年、私の関心のすべてはあなたの元にあったと……。

 ラブレターであります。

 私は、真剣に心配になりました。でも……卒業を控えた彼女は私に、「マチガイはないか」と言ってこの手紙を見せたのだから、状況としてそれはラブレターでは無い。

 日本人の文章を読む感覚でそれはラブレターでも、中国人にとってはラブレターじゃないのだ、ということを納得し、ようやく転がり落ちた椅子から私は這い上がります。まぁねぇ、白髪三千丈、後宮の佳麗(華麗だったっけ?)三千人のお国柄だもんなぁ。本当に彼女が文に書いたとおりの心情で現在もいるとしたら、メシも喉を通らんはずであります。

 貴重な学習でありました。中国人は相手を喜ばせるためにラブレターを書く。来年私がそのような手紙を貰ったら、ちゃんと誤解せず、舞い上がらず、静かに「おお中国の人の文章ですねぇふんふん」と読めばいいのだ。

 ……って、誰がそんなの私にくれるのだ。

 急に寂しくなる私。来年の今頃味わうはずの寂しさを今から味わってどうする。

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