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2012年11月26日 (月)

京都祇園「白蓮」さんの思い出

 かなり昔、少なくとも35年から40年近く前の話ですけど、京都、祇園という町に、『白蓮』というすごい名前のスナックがありました。

 ママは美人で、勤めている女性たちもみんなきれいで気立てがやさしい、それも私が若い頃に通いつめた理由だし、ママのだんなさんであるタクシー運転手が当時私の同僚だったということもなじんだ理由でありますけれど、私にとって一番の魅力は、お店が営業中、ずっとバックグラウンドミュージックを流してくれていた、そのことでした。暖かく、やさしく、それでいて物悲しい曲は物悲しく静かに、飲んでいる私たちを深く、癒すようで、それはそれは素敵だったのでした。

 スチールギターの名手がいたのです。白蓮さんの自慢は、その生演奏でした。

 私は随分その方とも仲良くなったのですけど、この間ふと思い出そうとしてその方のお名前を忘れていることに気づきました。申し訳ないことです。白蓮さんの店内に流れていたスチールギターの音は、ひとつぶひとつぶ、鮮明に覚えているのに。

 カラオケという機械システムが、祇園のスナックの何軒かに導入され始めた頃でした。しかし私の知る限り白蓮さんはその機械をおかず、歌いたい客がいたらスチールギターの生演奏で歌わせる、と決めていました。

 ある日、「たまには中くんも歌え」と言われ、音痴で悪声の私もたった1回、マイクを持ちました。

 「黒の舟歌、お願いします」

 スチールギターの名手はとっても素敵に微笑み、瞬時にイントロを弾き始めました。

 男と、女の、間には、

 深くて、くらい、川がある、

 誰も、渡れぬ川なれば、

 エンヤコラ、今夜も舟をこぐ……

 マイクを置きながら私は、「すごいですねぇ、レパートリーはどれほどあるんですか?」

 演奏者は笑って答えません。代わってママが、あの独特のかすれ声で、「まぁ500曲ってところかしらね」

 ……カラオケも、華やかで面白いと思います。しかし、地球上にどっか1軒くらいあの生演奏で客に歌わせるというシステムがあってもいいのじゃないかと思います。500がレパートリーということは衛星カラオケの何十分の1ですけど、それが物足りない客は行かなきゃいいだけの話。

 中国で探そうかなそういうお店。

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