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2012年11月26日 (月)

日本語を学び始めて2ヵ月半

 ずいぶん私は調子のいいことばかり書いてきましたが、日本語にはじめて接する人たちが「あいうえお」を発音することはそんな簡単じゃありません。

 「カーペット」をいくら練習しても、「カペト」としか言えない人もいます。中国は広く、省によって発音がかなり違います。長く伸ばす音を持たない、そして促音「っ」を音韻体系の中に持たない、そういう省の人も黒龍江東方学院には来ています。そもそもこの、黒龍江東方学院、が言えません。長音があり拗音があります。相当に発音しにくい校名だと思います。失礼ながら湖北省の人にとっては、「ジェットコースター」なんてトレーニングしないと生涯発音しない、できないでしょう。まぁそこにいる限り、する必要もないのですけど。

 そのかわり、彼女らは「チー」を何十と発音できます。q、c、ch、zh、それぞれの母音がiなのかuなのか。高いのか低いのか上がるのか下がるのか平声なのか。これほど複雑な音韻をもちながらどうして「昆虫」を「コンチュー」と呼べないのか、本当に不思議です。ちなみに「河」を意味するheも、こんりんざい「へ」ではありません。「ほ」でも「ふ」でもなく、強いて書けば「ほぅぇぁ」みたいな複雑怪奇な音です。私は生涯河北省にはいけないだろうと思います。その「河」が発音できないからです。

 今日は、ある教材の輪読がその湖北省の出身者のところでストップ。なんどやって見せても、「衣食住」の、とりわけ「住」が言えない。

 私は、「いま発音している、その字をちゃんと発音しろ、ちゃんと見ろ」と、言いました。「あなたは、口ではその字を発音しているが意識は次の行のどっかにとんでいる。いくつか先の単語をどう発音しようかと、頭ではそう考えている。なんどやってみせてもできないのは当たり前だ」と言いました。彼女は「そんなことしてません、考えてません」と言いました。すがるような目で通訳さんを見、ついに泣き出しました。泣き出してもそこでやめるわけにはいきません。「衣」「いー」「食」「しょく」「住」「じょぅ」私「ブートェ(ちがう)!」というようなやり取りが続き、私たち2人は結局ベルに助けられました。

 すべての授業が終わった夕方。

 1人で職員室のパソコンの電源を落としていると、入り口に彼女が立ちました。かかとをちゃんと揃え、「先生、お疲れ様でした。気をつけてお帰りください」。

 何度か練習したようで、かなり正確な発音でした。

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