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2012年9月20日 (木)

「若者たち」による「若者たち」討論

 90分の授業の中で、はじめか終わりに、「若者たち」が歌われるようになりました。

 次の日曜日には新入生歓迎会があり、そこでどのクラスも何かを披露することになります。

 その場でこの歌を歌うことは、入学時の彼らとの合意でした。

 今日の練習のとき、1人の男子生徒が立ち上がり、「今、この歌を歌うことはどうなのか」と発言しました。「中日関係が最悪の時にこの歌を歌うことがどういう影響を及ぼすだろう。」

 討論が始まりました。外国語学部には、日本語科のほか、英語、ロシア語、韓国語、フランス語、そのほか色んな語科があります。

 いったん、「この歌は学級の歌としてこれからも歌うが、歓迎会の時に学部生全部の前で歌うことはしない」という風に決まりかけました。

 無理もありません。彼らの中には、日本語を勉強しているという理由で高校時代からの友人をなくしたものもいます。親戚から、「日本語なんか習わないで郷里へ帰って来い」と言われているものもいます。

 私は、「あなたがたに任す」と発言しました。

 しかし討論は終わりません。結局、歌う前にクラスの代表(とてつもなく声のいい女子)が、歌詞の説明とこの歌を歌うことになった経緯を説明し、歌い始める、ということになりました。

 日曜日は、どのようなことになるのか、90%の期待と10%の不安があります。

 彼らは彼らで歌を研究し、この、ブロードサイドフォーの「若者たち」を、複雑な輪唱にしました。男声と女声が交錯するのです。

 討論のあとの練習。

 不覚にも、こみ上げてくるものがありました。先日の夜自習のさい、突然全館が停電し、真っ暗になった教室でごくごく自然発生的に「若者たち」の大合唱が始まった、その時と同じく、こみ上げてしまったのです。

 聞き終わり、私は短いスピーチをしました。

 今はたしかにみんなが心配するように中日関係は最悪だ、でも長い歴史を振り返るなら、仲良く相互に影響を及ぼしあってきた歴史のほうがずっと長い。冷静になればお互いなしにはやっていけない、そのことに人々は気づくだろう、君らが勉強している日本語は将来必ず役に立つ、道は果てしなく遠くなんかない、その日は、あしただ。

 90分の「授業」が終了しました。

 その日の夜、1年生一斉の夜自習。6時開始。

 教具を持って教室に入ると、私と助教(通訳の4年生。女子)を歓迎する会の用意がなされていました。会の趣旨についての班長(教室の代表者)のスピーチの後、11人が歌を歌ったり、故郷の言葉を披露して「これは共通語だとなんというでしょう」というクイズを出したり、にぎやかに椅子取りゲームをしたりパントマイムをしたりして、楽しいひと時を過しました。最後は、「偶然であった私たちだがこの出会いを大切にしよう」という意味の歌を全員で合唱してくれました。

 1人の男子学生の言葉。

 「私は今まで日本人に会ったことがありませんでした。先生が、初めて会う日本人でした。実際に会ってみると、映画で見たのとは全く違っていました。」

 ……胸にしみる一夜でしたが、生徒達はみな、彼らなりのやり方で、「中日問題」に向き合おうとしているのだと、思いました。

 勉強は今、始まったばかり。彼らはこれから4年間日本語を勉強します。4年後には全員が通訳レベルになります。(その成果は今の4年生が証明している)その語学力はどのような政治・経済情勢のもと、どんな場で、どのように生かされるのだろう。楽しい歓迎会の終了後、自室に戻り、その思いが、心から消えません。

 このブログをご覧いただける方はそんなに多くなく、それだからこそありがたいのですが、できれば、本当にできればでいいのですが、中国の北の町にこのような大学生がいるらしいよ、ということを身近な方とのお話のついでに、伝えていただけないでしょうか? 1人でもいいんです。

 私は自慢したいのではありません。絶対にそんな気持ちはありません。今、日本中に充満しているかもしれない一方の「中国人像」とはまるで違った群像もあることを、そしてその人たちもまた、ニュースに登場する人たちと全く同じく具体的な肉体と人生を持っていることを、知ってほしいのです。

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コメント

この文章を読んでいて、中さんと生徒が良い関係を築けているのが良く分かります。
中さんに会い、日本語や日本に関することを教えてもらったことで、この子達の中で日本に対する考え方が、より良いものになっていることでしょう

中さんのされていることは、世界的にみると小さいかもしれませんが、確実に種は撒いています
彼らがそれをどう育ててくれるか・・・中日関係の明日に新たな光が見えます

そうですね、私もそのことを話題に上げさせて頂きます

「若者たち」
夢に向かってがんばっている人にとっては、背中を押してくれる良い歌詞ですよね
小さい頃にそんな気持ちになったことを思い出しました・・・

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