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2012年8月30日 (木)

ハルピンの市場、映画「三丁目の夕日」のことなど

 午後校内を歩いておりますと、2人の男子生徒が声をかけます。「どこ行くんですか?」米だよ、なくなっちゃったんだよ。「1人でですか?」うん。「どこで売ってるかわかってるんですか?」まぁ新中心あたりをぶらぶらしてると見つかるだろう。「じゃ僕らが行ってあげます。」
 君らは君らで行くところがあったんだろう、と中国語で言えないので、かたじけなく好意に甘えることにします。歩き始めていろいろ質問をします。あの店は何? パソコン売ってるの?「いえ違います、2元払って1時間インターネットできるんです。」26円で1時間かぁ。私もするかな。
 歩いていると商店街に着きます。工事現場を通って、15分ほどかかります。大学生は2か所で道を尋ね、ついに米を売る店が地下の市場にあることを突き止めます。
 地下。
 昭和30年代の市場の臭いが、よみがえります。
 「三丁目の夕日」という映画がありました。すぐれた映像作品だったと思います。あの世界でまた暮らしなおしたい、と考える人がいることは理解できます。しかしあの映画が再現できなかったことが1つ、あるとするなら、それは、「臭い」だ。人間が生活する限り付きまとっていた、常に大気に向かって開放されている汲み取り式の排泄物の、どぶを流れる民家からの生活廃水の、市場の商売人がその裏に投棄した魚の頭部の、内臓の、動物の骨片の、腐敗して臭い立てる、その空気であります。
 薬師丸ひろ子の、俳優の名前は忘れたけど六ちゃんの、堤真一演ずる鈴木自動車創業者の、優しく美しい人情の世界を取り戻せないものか、とうっとりされる人がいることは理解できます。
 しかし、その世界を呼び戻そうと思うと、一緒に戻ってくるものがある。それが、臭いであります。その臭いの中で、六ちゃんなる美少女は恋愛を夢み、結婚し、子どもを育てたのだ。男女が愛を語らおうと思うと頭上の空間、1立方メートルあたり百匹はいると思われる肉バエ銀バエのにぎやかにもまがまがしい羽音であります。
 市場を、米を下げて歩きます。すると目にもあざかなな美少女が今夜の食材を選んでいます。その鼻腔にも、この市場の臭いが満ちている。彼女もあと30年経てばもう今のごとき美少女ではない。30年。まちがいなくその日にはここハルピンの市場にもクーラーが入りそれ相応の廃棄物処理システムはでき民家の閑所はまちがいなく水洗化されます。そのとき、彼女がこの今の光景をよみがえらせたいと思うか。
 思わない、たぶん。
 美しいものだけを描いて映画はできる。それでいいんであります。だから「三丁目の夕日」の光景は実は日本のどこにも、どの時代にも、なかった。ユートピアとはギリシャ語のウトペイア、「ありえない場所」なのであります。
 ハルピンの市場は、しかし、それでも、それでも、それでもなお、私にとって「なつかしい」のでありました。矛盾するのでありますが。

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コメント

お元気ですか?

こっちは来週にはテストです。
勉強時間が少ないにも関わらず、謎の自信に充ち溢れてるので、テストが怖いです。


最近、何故か2年生の間で自転車のイタズラやげた箱のイタズラが激しいです。
2年生の中に犯人がいるとは信じたくないものですが、修学旅行も近いので、
きちんとけじめをつけたいものです・・・。

ネットカフェが1時間26円!
安すぎます(驚
買うより断然安いですね・・

ハルピンの市場の臭いって、そんなにすごいのですか?
公衆便所みたいな感じなのかな
下水が整備されていないんですね

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